社長の夢実現への道

社員が原因で経営理念が浸透しないパターンと対策

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社員が原因で経営理念が浸透しないパターンと対策

経営理念を策定して浸透させようとしたときに、「経営理念が浸透しない」とお考えの社長は多いことでしょう。

そもそも、経営理念が間違った内容の場合は、経営理念が浸透しにくいですし、浸透したとしても機能することはありません。また、いくら正しい経営理念を策定しても、社員が原因で経営理念が浸透しないことがあります。

正しい経営理念を策定しても、社員が原因で経営理念が浸透しないパターンには、主に5種類あります。その内容には、社員の考え方によるものや、仕事上の都合によるものなど、さまざまです。

もし、経営理念が浸透しないことでお悩みであれば、このコラムの5種類のパターンをご確認ください。簡単にですが、パターン別に対策もご紹介しております。

前出のコラム「社長が原因で経営理念が浸透しないパターンと対策」と併せてご覧ください。

経営理念を浸透させて、立派な会社を目指される社長のご参考になれば幸いです。また願わくば、当社のコンサルティングを利用してみたいと思って頂けたら、なお幸いです。

浸透の前提条件となる正しい経営理念とは?

このコラムでは、前提として正しい経営理念を策定した場合に限り、社員が原因で経営理念が浸透しない理由を述べています。まずは、正しい経営理念がどういったものなのかをご説明いたします。

正しい経営理念とは?

正しい経営理念とは、経営理念に、次の3つの内容を含んでいる経営理念のことです。

  1. わが社の存在目的
  2. わが社でもっとも大切にする価値観
  3. 具体的な仕事目標が引き出せること

これらが含まれた経営理念であることで、浸透させることで、経営理念の機能が発揮されます。

会社によっては、「経営理念」という名称ではなく、社是や社訓、バリュー、ミッションなど、さまざまな呼び方がありますが、上記の3つを含むことが基本となります。

当社では、この3つを含む一言で表される経営理念のことを、「基本理念」と呼んでいます。

機能する正しい経営理念の構成要素

さまざまな企業で経営理念のコンサルティングをご提供してきた経験や、経営理念の研究を行ってきた結果、今のところ次の4種類のもので経営理念をパッケージとして構築すると、機能する正しい経営理念になります。

  1. 基本理念
  2. 企業ビジョン(全社目標)
  3. 経営指針
  4. 行動指針

これら4つの項目については、機能する正しい経営理念とは?をご覧ください。

以下、正しい経営理念を策定して浸透させようとしたときに、社員が理由で浸透しない主なパターンと対策を簡単に述べたいと思います。

1.社会貢献に対する意識が低い

社員の社会貢献に対する意識が低くて、経営理念が浸透しない場合があります。

会社の社会貢献に対する勘違い

会社の社会貢献に対する勘違い

社会貢献と利益を別物として思い込んでいる人がいます。確かに、会社が植林や慈善団体への寄付などの社会貢献をしたら、利益が減ってしまうことになります。社員は、自分や自分の家族の幸せを考えている人が多いことでしょう。会社の利益が減ってしまったら、自分の給料が上がらないという恐れが出てきます。

また、社員の中には、仕事をとても合理的に考える人がいます。それ故に、事業活動と社会貢献を別物と考え、社会貢献に対する意識の低い人がいます。

もちろん、会社を維持・発展させるためには利益が必要です。しかし、事業活動と社会貢献が別物だということは、単なる勘違いです。

会社というものは、お客様に貢献することによって、利益を得ている団体です。つまり、社会貢献によって利益が得られているのです。

経営理念に「我社の存在目的」が明記されているか、それをイメージできるものであれば、社員にそれを理解させるようにすることです。

社会貢献に対する意識が低い社員への対応

社会貢献をすることが、どのように利益につながり、どのように経営理念の実現につながるのか、そしてどのように自分自身の幸せにつながるのかを、合理的に説明することです。また、経営理念がわが社にとってどれだけ大切なのかを伝え続けます。

経営理念の研修を行い、自社の事業がどのように社会貢献につながっているのかをワークシートにしても良いでしょう。社会貢献したら、どのように会社の利益につながるのか、自分たちの生活の豊かさにつながるのかも、考える時間を設けても良いでしょう。

結局のところ、全社員に経営理念を浸透させようとしても、全員一律に同じように伝わるわけではありませんので、まずは伝わりやすい社員から伝えていくことが大切です。まず、経営理念浸透プロジェクトを発足し、厳選された経営幹部や有志から浸透を行うことです。

2.先代社長の経営理念が浸透している

先代社長の経営理念が社員に浸透していて、次代社長が発信する経営理念を受け入れてくれないパターンもあります。このパターンには、次の2種類あります。

  1. 先代社長の経営理念が機能している
  2. 社長よりも古参社員の影響力が強い

先代社長の経営理念が機能しているパターンとその対策

次代社長が経営理念を変更し、それを浸透させたい場合は、先代社長の経営理念が機能しているが、次代社長からすると何か物足りないと感じているのか、もしくは自分の色に変えたい場合でしょう。

前者の物足りなさを感じる場合は、経営理念が時代に合わなくなってきている場合と、会社が成長してきて経営理念が会社に合わなくなってきている場合があります。どちらの場合も、先代社長からの続いている経営理念を踏襲しつつ、それを補足する形で経営理念を進化させたたら良いと思います。

後者の自分の色に変えたい場合ですが、先代からの経営理念が機能していて、物足りなさを感じていないのであれば、最初は、先代からの経営理念をそのまま踏襲すべきです。そして、社員が社長を認めるような成果をだし、会社を発展させることができたら、新しい経営理念に変えても受け入れてくれることでしょう。

社長よりも古参社員の影響力が強い場合のパターンと対策

社長よりも古参社員の影響力が強い場合のパターンと対策

古参社員は、次代社長よりも年配な人が多いことでしょう。また、先代社長といっしょに仕事をしてきて、先代社長の経営理念の旗印の基、会社を成長させてきた実績もある人のはずです。

新しい時代に入っているのにもかかわらず、古参社員が「先代社長はこうだった、ああだった」と、次代社長の経営理念を受け入れてくれないので、浸透しないのは当たり前です。それは、次代社長を経営指導してくださっている部分もあるので、無碍にはできません。

この場合には、いくつかの対策があります。

  • 納得してもらえるまで新しい経営理念の大切さを訴え続ける
  • その社員を窓際にする(役職を付けて部下を付けない)
  • 先代社長が会長となって、古参社員に協力を求める
  • 社長が、古参社員が納得するほどの実績を出す

どの場合も、次代社長は古参社員への謙虚さを忘れてはいけません。

3.経営理念よりも社内ルールが優先されている

経営理念よりも社内ルールが優先されていたら、経営理念は浸透しません。経営理念よりも社内のルールが優先されているパターンには、次の2つの場面でおこります。

  1. 初めて経営理念を浸透させようとしたときに起こる場合
  2. 一度は経営理念が浸透しても経営理念が形骸化してしまって起こる場合

前者は、社員が原因で経営理念が浸透しないパターンですが、後者の場合は社長が原因のパターンです。

経営理念が形骸化して社内ルールが優先されるパターン

後者の形骸化からご説明いたします。これは、一度は経営理念が浸透しても、社長が経営理念にそぐわない独自ルールを作ってしまい、経営理念が形骸化していくパターンです。社長の行動が経営理念と一致していないので、経営理念が浸透しません。

また、経営理念の浸透を社長がおろそかにすることで、いつの間にか、元の社内ルールが優先されていて、経営理念が実践されていないこともあります。

詳細は前出のコラム、「社長が原因で経営理念が浸透しないパターンと対策」の社長の行動が経営理念と一致していないをご覧ください。

初めて経営理念を浸透させようとしたときに社内ルールが優先されるパターン

初めて経営理念を浸透させようとしたら、最初は今までの社内ルールが優先される場合があります。

例えば、経営理念に「お客様に信頼されること」と書かれているのにもかかわらず、営業部で実力のある社員が、報奨金の欲しさに押し売りのような、お客様に嫌がられる営業活動を行ってしまうということです。

社長は、「今のままでは、目標とする立派な会社にできない」と考え、経営理念が策定され、それに基づいて会社をイノベーションさせていこうとしているわけです。社内ルールが優先されてしまったら、会社はイノベーションできません。

社内ルールが優先される場合の対策

社内ルールが優先される場合の対策

経営理念よりも社内ルールが優先される場合は、いくつかの方策を取る必要があります。

1つ目に、経営理念に基づいた行動が評価されるようにすべきです。

2つ目に、経営理念に基づいた経営計画と経営方針を策定します。その方針書を明確に打ち出し、社員に徹底してもらうことです。

3つ目は、その経営方針に基づいて社員が行動できているかを、上司が面談をしてフィードバック分析をし、そのときに1on1(ワン・オン・ワン)の経営理念学習を行います。

これらは、経営幹部が徹底できるようにするため、まず経営幹部から経営理念学習を行っていくことが大事です。

4.経営理念を軽視している

今まで経営理念がなくてもうまくやってこられた会社であれば、経営理念の浸透で苦労します。社員によっては、経営理念を「価値のないものだ」とさえ思っている場合があります。経営理念を「宗教だ」と一蹴してしまう人もいます。「経営理念で飯は食えない」という人もいます。

経営理念を軽視するパターン

社員が経営理念を軽視するパターンには、いくつかあります。

  • 社員の固定観念で経営理念はダメなものだと思い込んでいる
  • 経営理念にメリットが感じられない

経営理念をダメなものだと思い込んでいるパターン

社長が、経営理念の大切さを社員に訴え、社員の内心は「立派なことを言っている」と思っていても、社員が受け入れようとしなかったり、深く理解しようとしなかったりする場合があります。

パレートの法則にもあるように、必ずそういった社員がいます。

経営理念を遵守しようとする社員がいると、陰口で「一人だけいい子ぶりやがって」と、学校でのいじめのようなことが起こることもあります。

経営理念にメリットが感じられないパターン

経営理念にメリットが感じられないパターン

経営理念の実現が、自分にとってメリットに感じられない場合は、社員は経営理念を受け入れてくれません。

また社長は、営理念の浸透によって会社をイノベーションさせようとしているわけですが、イノベーションを望まない社員にとっては、経営理念はデメリットそのものに感じるはずです。

社員からは、「今まで仕事をうまくやってきました。それのどこがいけないのですか?」とか、「変に仕事が増えたらいやですので、今のままで良いです。」という具合です。

そういった社員は、経営理念の実現に貢献しない社員ですから、もちろんその社員は評価が下がってしまいます。そうなると、余計に経営理念を受け入れなくなることでしょう。

社員によっては余計な仕事を増やしてしまうことも

社員によっては余計な仕事を増やしてしまうことも

経営理念の学習を行うということは、その分だけ仕事時間を割くことになります。すると、その時間の分だけ、仕事を早く終わらせるか、残業しなければなりません。

仕事を早く終わらせることは、社員にとっては仕事が減ることを意味し、場合によっては別の仕事を余計に与えられてしまいます。仕事をたくさん与えられても、給料はそうそう変わりませんので、経営理念にメリットを感じない社員の気持ちもわかります。

経営理念の浸透をしようとしたら、社員の一部が余計な仕事をたくさん作っていき、仕事を囲い込んで、属人化していき、経営理念浸透どころではない状態をつくることもあるでしょう。そして、「経営理念の浸透で、仕事が進みません。」と言ってくる人が出てきます。

そのような仕事の仕方では、会社は成長しませんし、競合他社に負けてしまい、社員の職すら危うくなる恐れがあります。

それこそ、社長が屈してしまうと、経営理念浸透を強く推進できす、経営理念はいつまでたっても浸透しません。

社員が経営理念を軽視する場合の対策

このパターンも、経営理念の大切さをよくよく社員に伝えることです。言葉が理解できないようであればかみ砕いて、それこそ何度も何度も根気よく伝えてください。小企業では、社長自身が社員に直接何度も伝えることが大切です。

正しい経営理念には、社員の幸せについても明記されているはずです。経営理念を実践していくことで、社員自身の幸せにつながることを丁寧に説明すると良いでしょう。

また、経営理念の実現、もしくは経営理念に基づいて作成された経営計画の実現に貢献した社員に、高評価が与えられるという人事考課を設定することも大切です。

経営理念を実践し、実績が出てくると、社員全員が経営理念の大切さを実感しはじめます。もちろん、最後まで異を唱える人も出てきます。そういった社員は、何かのタイミングで意を決するように経営理念を受け入れるか、会社を去っていくことになります。

また、正しい経営理念には、仕事の生産性向上や改善のことが盛り込まれているはずです。仕事の優先度を決めて、重要な仕事とそうでない仕事、緊急性の高い仕事とそうでない仕事で分類し、経営理念を学習する時間を作るように、社長命令で行うべきです。

なぜなら、経営理念の浸透は、会社のプロジェクトの中で最も大切なことだからです。経営理念の浸透が社外向けにも良い影響を及ぼすことになり、会社の成長につながります。

5.経営理念の内容の意味が理解できない

社員に、経営理念学習を進めていく中で、経営理念の内容の意味が理解できない人が出てくることがあります。

経営理念の内容の意味が理解できない場合の理由

経営理念の内容の意味が理解できない場合の理由

経営理念の中には、哲学が盛り込まれていたり、経営判断の基準が盛り込まれていたりと、社長の代わりとなって高度な仕事をもできる内容になっているからです。

経営理念に込められた深い意味は、仕事だけでなく、人々の行動や、社会の仕組み、市場のことなど、世の中のことを理解していくことで、理解できるようになります。

社会経験の薄い人、考えて行動することが苦手な人、新入社員は、そのような理解が乏しいので、経営理念の意味を深く理解できないことでしょう。

経営理念の意味が理解できない社員への対応

経営理念の意味が理解できない場合には、経営理念浸透の担当者が、経営理念の意味を中学生でもわかるぐらいに説明できるように、意味を理解しておくことが大事です。

また、部下は一度にたくさんのことを理解することができないと思います。経営理念浸透のための学習会は、短い時間でも良いので、何度も何度も開催すると良いでしょう。

上司からその部下に対して、クレドのように1つだけでも良いので、「これについて普段から考えて仕事をしなさい。何か気が付いたことがあったら報告してください。」という指示を出すことで、社員は世の中の理解を深めていくこともできます。すると少しずつ、経営理念を深く理解できるようになっていきます。

例えば、「今週は、行動指針の中の『お客様を大切にする』ということを考えながら、仕事を工夫してください。」という具合です。その工夫を別の社員に共有することで、全社員に少しずつ経営理念の理解が深まっていきます。

社員に経営理念を理解してもらうために社長が取り組むべきこと

社員に経営理念を理解してもらうために社長が取り組むべきこと

以上、社員が原因で経営理念が浸透しない理由と対策をまとめました。

これらのことは、経営理念を浸透させるときに、よく起こることです。これらのことが起こったときに、社長が自ら取り組まなければならないことが、見えてきたことでしょう。

まとめると、社長は経営理念について次の3つを行うことです。

  1. 正しい経営理念を策定すること
  2. 経営理念に基づいて経営計画を策定すること
  3. 経営理念の浸透をし続けること

もう一つ付け加えるとするなら、「経営理念発表会を開催し、経営理念を宣言すること」です。これでメリハリをつけ、社員に自覚を促します。

いかがでしょうか。経営理念が浸透しないことでお悩みの方は、ぜひこれらのことをチャレンジなさってみてください。

もし、経営理念の浸透に自信のないようでしたら、当社の経営理念コンサルティングがあります。ご連絡をお待ちしております。

この記事の著者

関山淑男

経営理念コンサルタント
関山 淑男 (Sekiyama Toshio)

経営理念の構築・浸透とビジネスコーチングのスキルに親和性があることに気づき、研究や実績を重ね、経営理念コンサルタントとしてのスキルを確立していく。社長としての経営経験や赤字企業の業績回復支援の経験から掴んだ教訓、ピーター・ドラッカー先生や一倉定(いちくらさだむ)先生などの経営理論を融合させ、独自の経営理念コンサルティング・メソッドを開発。

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