社長の夢実現への道

競合他社と比べ商品力や価格で負けている場合でも集客は可能か?

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競合他社と比べ商品力や価格で負けている場合でも集客は可能か?

競合他社の抗戦や新興企業の台頭などにより、主力の自社商品が、商品力や価格競争力で競合他社に負けてしまい、売上高が毎月下がってしまったら、貴殿ならどうしますか?

新商品開発というご意見もあることでしょう。内部のコストカットもありえることでしょう。製造や販売の効率を高めることも考えられます。しかし、新商品の開発費もなく、内部のコスト削減も、世間並に生産性を向上させることも難しい状態です。

先日、まさにそういった企業様から、「なんとか集客したい」との難しいご相談をいただきました。

結論から述べると、条件によっては集客ができます。

このコラムでは、競合他社よりも商品力や価格で負けている商品で、集客ができる条件を述べつつ、集客ができたら会社として取り組むべきことをご説明いたします。零細企業で集客にお困りの企業様のご参考になれば幸いです。

倉庫業の企業様からのご相談

東京都内にある倉庫業の企業様から、集客に対するご相談をいただき、事業部長とお会いしました。会社全体としては従業員が50人ぐらいの会社ですが、事業部長が担当する事業は、2~3人の小さな事業でした。

社長が父親で、専務のお兄さんと本業を経営されており、弟さんが小さな部門の事業部長をされていました。息子さんは50歳ぐらいです。事業部長は社長や専務の経営のやり方に反発している感じで、別事業を立ち上げたようでした。

その事業の売上高が毎月下がってきているので、社長から「何と売上を伸ばしなさい。伸ばせなければ事業部を閉鎖する。」と発破をかけられているとのことでした。

冒頭での話のように、競合他社に商品力や価格競争力で負けており、新商品開発やコスト削減が難しい状態でした。

そういった中で、売上高の半分程度を占めているオンリーさんの取引先が、価格の安い倉庫に乗り換えることが懸念されており、早急に手を打たなければ大打撃を受けかねない事態におちいっていました。

念のためいろいろと質問をしました。その質問例をご紹介しますと、

  1. 顧客の分類と売上高はどのような分布になっていますか?(取引企業の規模、取引金額など)
  2. その分類の中で、売上高が減ってきているところはどこですか?
  3. 損益計算の月次推移を見せてください。
  4. なぜ顧客数が減ってきているのでしょうか?
  5. 新規でどのような顧客が集客できたら嬉しいですか?
  6. その顧客は、倉庫にどのような価値を求めていますか?
  7. 競合他社のサービスと比較して、劣っているところはどのようなところですか?

集客ができていない企業様は、いろいろと分析していないことが世の常です。驚いたことに事業部長は、顧客を分類して調べていたことや、月次推移を作成していて先月初めて月次で赤字になったことなどを、即答で教えてくださいました。

倉庫業は、商品が差別化しにくいので、工夫しなければ価格競争になりやすいです。顧客数が減っている理由は、競合他社のいくつかがスケールメリットを活かして安値で出してきて激しい価格競争におちいっており、小規模な自社は価格で圧倒的に負けていることでした。価格差は、実に2倍の開きがありました。

商品力に差がないこと、価格差で2倍の開きがあることを条件として、集客はできるでしょうか?

普通ならムリです。

競合に負けている商品で集客ができる条件とは?

商品が売れるかどうかは、商品力や価格競争力だけでなく他にも要素があります。集客力は、商品だけでなく企業が持っている総合力が、顧客にとって魅力的かどうかによって決まります。

完全に技術系の社長であれば、商品開発や価格競争に売って出ることが多いですが、物流の勉強されている社長であればQCDSと言って、クオリティ、コスト、デリバリー、サポート/サービスの4点を考えることでしょう。QCDSの中で競合他社よりも勝っている部分、つまりは自社商品の強みを発見することが大事です。

ところが、集客ができるかどうかはQCDSでは考える範囲が広いと思います。すでに販路があり、販売促進ができている場合の集客力は、商品力、価格競争力に、次の3つを合わせた、合計5つの総合力で決まるのではないかと思います。

  1. 知名度が勝っていること
  2. サービス力が勝っていること
  3. 販売力が勝っていること

これらをまとめて、マーケティング力があると言えます。それぞれ3つのことを解説いたします。

知名度が勝っていること

知名度とは、顧客にどれだけ知られて浸透いるかということです。知名度の低い商品は、商品が良く価格が安くても敬遠される場合があります。その逆に、商品力や価格競争力で負けていても、競合他社よりも知名度を高められると、集客できるようになる場合があります。

知名度を高める方法は、広告力や市場占有率を高めることです。市場占有率を高めるためには、広告力やサービス、販売力とも関係してくるので、市場占有率を高めることを目標としながら、それらを高めていく必要があります。

サービス力が勝っていること

サービス力とは、顧客対応力と言えます。店舗経営であれば、愛想のよい対応や、丁寧な梱包、掃除の行き届いた居心地のよい店舗などでしょう。

自社商品が、競合商品に商品力や価格で負けていたとしても、サービス力が勝っていると、集客ができる可能性があります。

商品力があり価格も安い競合商品でも、どこかに必ず不満があるものです。その不満の中にサービスの悪さがあれば、競合他社よりも良いサービスを提供するだけです。まさしく、お客様の背中の痒いところに気が付き、そっと手を伸ばすような気取らないサービスが、良いサービスだと思います。

便利なサービスを提供していれば、他社より多少高くても、よほどの理由がない限り、永くご利用いただけることでしょう。機械であれば、メンテナンスもサービス力の一つです。

また、顧客から自社商品の不満を聴いて改善していく心がけやクレーム処理も、サービス力の一つになります。正しいクレーム処理は、ファンづくりに欠かせません。

広義な意味では、顧客の住んでいる場所に近いところに店舗があることも、サービス力に含まれると思います。それは、顧客が商品を欲しいと思ったときに、手っ取り早く手に入れることができるというサービスになります。このことを、企業間取引に当てはめると、納期やメールの対応が早いといったことになります。

販売力が勝っていること

販売力とは、商品を販売する力のことですが、押し売りでは真なる販売力とは言えません。押し売りで一時的に売上高が上がったとしても、会社の評判が落ちてしまい、ブランドイメージを下げてしまう可能性もあります。

販売力を高める方法は、競合他社よりも顧客に近いところにいることです。最近では、販売力の一つに提案力が加わるようになりました。提案力を簡単に説明するならば、顧客のニーズを聴き出し、商品の魅力を伝え、価値を感じてもらうことです。

また、商品やサービスは緊急性の低いものほど、すぐに購入や利用されなくなります。緊急性の低いものの販売力は、商品が欲しくなったタイミングで、自社を1番に思い出してもらったり、1番に発見してもらったりすることです。

1番に思い出してもらえるようにする手法を、ブランディングと言います。1番に発見してもらうようにする手法を、検索エンジンマーケティング(SEM)と言います。

ブランディングについて詳しく知りたい方は中小企業のブランディングの考え方を、SEMについて詳しく知りたい方はSEMとSEOの違いをご覧ください。

これらの条件を活かして集客ができるようになったとしても、一時的なものだとお考えください。なぜなら、商品力や価格競争力は、顧客が絶対的に求める価値だからです。

知名度やサービス力、販売力で競合商品よりも集客できたとしても、いずれは商品力や価格競争力の戦いになっていくことが多いです。ですから、商品力や価格競争力でも勝てるようにすることが王道です。

競合他社よりも勝っている価値を発見する方法

競合他社よりも勝っていて、なおかつ顧客が求めている価値のことを「強み」といいます。強みがあれば、競合他社よりも優位に立つことができ、場合によっては競争の外に出ることができます。

強みの発見は、マーケティングの3C分析を行います。次の図をご覧ください。

3C分析による強みの発見

この図には、3つの円が三角に描かれていて、3つの円が重なっています。上の円は顧客(Customer)、左下の円は競合他社(Competitor)、右下の円は自社(Company)を表します。この3語の頭文字で、3Cと呼ばれます。

この円は、価値を考えると、分析しやすいです。つまり、顧客の円は顧客が求める価値、競合他社の円は競合他社が提供できる価値、自社の円は自社が提供できる価値です。

マーケティングの3C分析の手順では、まず顧客設定をします。ご相談いただいた企業様の場合は、顧客はすでに明確になっています。また、今回は商品の販売について考えるので、顧客が商品に求める価値や競合商品や自社商品が提供できる価値を考えます。

円が重なった右側の部分、つまり顧客が求めていて、競合他社が提供できず自社のみ提供できる価値を、ブルーオーシャンといいます。ここが強みの部分です。その部分に、知名度、サービス力、販売力が当てはまるのであれば、顧客は競合他社商品よりも自社商品を選んでもらえる可能性があります。

赤い部分はレッドオーシャンです。顧客が求めている価値の中で、競合商品と自社商品が同じく与えられる価値です。この価値で戦った場合は、価格競争やサービス合戦になり、強者が勝つことになります。

円が重なった左側の部分、つまり顧客が求めていて、競合他社は提供できるのですが、自社は提供できない価値を、弱みといいます。今回のご相談では、商品力と価格が弱みとなります。

このように、マーケティングの3C分析を行うことによって、自社商品が競合商品よりも勝っている価値を発見することができます。

基本価値は満たされているか?

その価値の中で、必要条件となる価値があるはずです。他の価値がいくら優れていても、その価値がなければ、お客様がそっぽを向いてしまうものです。

例えば、飲食店であれば「おいしい」という価値です。おいしくない飲食店には、お客様は二度と行かないからです。

そのような価値のことを、基本価値と言われています。

基本価値を自社が提供できていない場合は、すぐさま改善に取り組むか、それともその価値を必要としない顧客に商品を販売することを検討すべきです。

マーケティングの3C分析の詳細なやり方は、3C分析とは?手順や活用法の徹底解説をご覧ください。

集客ができるようになったら会社として取り組むべきこと

サービス力や販売力を高めて集客ができるようになったら、会社のプロジェクトとして取り組むべきことがいくつかあります。すぐに取り組むべきことは、次の5点です。

  1. 商品力の改善
  2. 価格競争力の改善
  3. 多角化で競争の外に出る
  4. 供給体制の改善
  5. 高付加価値の新商品を開発する

サービス力や販売力によって、競合他社よりも販売ができるようになり、市場占有率が高まってきたら、競合他社が黙っていません。競合他社は、自分を守るために、市場分析してこちらが何をして集客ができるようになったのか分析し、対策を打ってくるはずです。

そうなる前に、集客ができて得られた利益を開発に回し、自社の弱みである、商品力と価格競争力の改善を行うべきです。また、多角化によって、別の市場に手を伸ばすことで安定した企業経営ができるようになります。

企業の利益は、未来のためのコストです。増えた利益を活用して、未来に発生しそうな不慮の事故に備えておくことや、高付加価値の新商品開発を行い、企業の将来性を高めていくことです。

この5点について、解説いたします。

商品力の改善

競合他社と比較して、弱みとなっている部分の改善していくことは、ぜひとも取り組むべきことですが、すぐにはできないとしてもすぐさま検討することは大事です。

ご相談のあった企業様は、売上高が減っていました。つまり、競合他社の商品力を顧客が魅力と感じていた証拠です。もし、小手先の集客で慢心して商品の改善を怠り、競合他社がサービス力や販売力を改善して来たら、取返しがつかない事態に陥る可能性もあります。

少なくとも、競合他社商品と同一の付加価値を持つようにすること。できれば、それ以上の付加価値を持つようにすることです。

新しい付加価値を考える方法の一つとして、今までの固定観念にとらわれずに、まったく新しいものと異種結合させると、思わぬ発想が浮かぶことがあります。

価格競争力の改善

競合他社よりも良い商品を開発し、さらにそれを安価で提供でき、充分に利益が得られることになったら、市場規模によっては大企業に成長できる可能性があります。

価格競争力を高める方法は、業務を効率化することと、仕入れなどの経費を下げることです。業務の効率化は、製造部門だけでなく事務も同様です。業務が効率化されれば、経費の削減にもつながります。

おすすめの方法は、環境整備です。効率化の目標は、競合他社と同じ価格で販売しても利益が得られる状態です。

外注費や原材料費を下げるときのポイントは、商品やサービスの品質を落とさずに下げられるかどうかです。商品の品質が下がってしまったら、商品力がさらに落ちて、せっかく集客した顧客を失ってしまうかもしれません。

多角化で競争の外に出る

多角化とは、アンゾフの多角化戦略が有名ですが、ここで述べる多角化の意味は、同一商品を他市場に投入することです。

例えば、箱根の温泉饅頭を製造している会社があったとしましょう。それを熱海や伊東の温泉饅頭も製造するという具合です。同じ温泉饅頭ですので、すでに持つノウハウを利用するだけですから、簡単に多角化ができます。新規市場にチャンネルが開けるかどうかも、ノウハウを持っているはずですので、容易に行える可能性があります。

もし、「箱根の温泉饅頭が売れているので、箱根の煎餅も開発しよう」と考えたら、今までとは異なるノウハウが必要となり、開発に時間とコストがかかってしまいます。このように、同一市場に別の商品を販売することを、多品種化といいます。

多角化によって、今までとは別の市場に進出するわけですが、仮に進出した市場は競争が緩やかだったとしたら、激戦区で戦ってきたノウハウも活かせば、容易に市場を得ることもできるはずです。

多角化について詳しく知りたい方は、新商品開発の成功率を高める戦略とは?多角化と多品種化をご覧ください。

供給体制の改善

集客ができるようになると、供給が間に合わなくなってくる可能性があります。ご相談のあったお客様では、倉庫に限界があるので、倉庫がいっぱいになってくると、同業他社と提携して、溢れた部分は外注するようになります。

製造業で供給ができない場面は、商品の生産が間に合わない場合と、原材料が手に入らない場合があります。

商品の生産では、生産する機械や人員の確保が大切です。もし確保できない場合に備えて、提携企業を見つけておき、少額であっても発注しておくことが大事です。

近年、野菜の不作や半導体の供給不足、貿易での物流が問題になりました。もしかしたら、オイルショックが再び発生するかもしれません。原材料が手に入らなくなると生産できなくなり、顧客に対して責任が果たせなくなります。

ご相談のあった企業様であれば、大地震で被災した場合の復旧や物流について検討しておくことも、大事なのではないかと思います。

このように、供給体制の改善では、増えた需要に備えることだけでなく、突発的な事故などを想定しての備えるようにしてください。

高付加価値の新商品を開発する

次に行うべきことは、高付加価値の新商品開発です。既存商品に新しい付加価値を加えたり、まったく新しい価値を持つ商品を開発したりすることです。

高付加価値とは?

高付加価値の商品とは、顧客が高付加価値だと感じる商品のことです。そのため、新商品開発は、社長や開発部長の独りよがりであってはなりません。独りよがりの商品は、バクチ的です。

新しい付加価値は、例えば温泉饅頭の味に、あんこだけでなくカスタード味やショコラ味を開発するといった具合です。

高付加価値の新商品開発は、新しい市場を創ることにもつながります。温泉饅頭のあんこ味は、ご高齢者が中心となっていると思いますが、カスタード味やショコラ味は、若い人や子供にも市場を広げることができます。この開発例は、新商品開発による多角化です。

新商品の企画段階で考えること

新商品開発を考えるときに、最初に「どのような商品を開発しようかな?」と考えがちですが、新商品開発の企画段階で考えるべきことは、次の通りです。

  1. 自社の顧客はどのような人(企業)なのか?
  2. その顧客はどのようなお困りごとを持ち、何を求めているのか?
  3. 顧客の欲求を満たすためにどのような新商品が考えられるか?
  4. その新商品の性質は、自社の経営理念に合っているか? その新商品の市場規模は、自社の規模に合ってるのか?
  5. 販路はあるか? つくれるか?
  6. 競合他社に勝つための販売促進の方針は? Web集客は可能か?

新商品開発は、顧客を考えることからスタートです。顧客が価値を感じてもらえなければ、いくら良い商品だと思っても、売れないからです。顧客は、もちろんエンドユーザーのことですが、商社や販売店などを通じて販売する場合は、それらの企業もユーザーとして考慮する必要があります。エンドユーザーにとって魅力的な商品であったとしても、商社や販売店が魅力を感じなければ、販売できないからです。

また、いくら顧客が価値のあるものだとしても、会社の性質に合った商品開発でなければなりません。会社の性質に合わないと、商品開発や販売に新しいノウハウが必要となり、時間とコストがかかります。

これらのことを考えるときに、マーケティングの3C分析を活用すると考えやすいです。

新商品が開発できたら、テスト販売から小さく初めてください。新商品が売れるかどうかは、売ってみなくては判らないので、いきなり設備を整えて生産するようなことはお控えください。

新商品開発は、他にもたくさんお伝えしたいことがあるので、別のコラムに譲りたいと思います。

以上、競合他社と比べ商品力や価格で負けている場合でも、集客が可能であることを述べてきました。また、集客ができるようになったら、競合他社に負けないように企業として取り組むべきことを述べました。商品力や価格競争力で負けて困っている企業様のご参考になれば幸いです。

当社では、商品の改善や多角化、商品開発のコンサルティングも得意としているところです。顧客数が増えて利益が出るようになったら、これらのコンサルティングもぜひご利用ください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

プロフィール詳細


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