社長の夢実現への道

ニーズとは?シーズとは?ニーズとシーズの違いと新商品開発

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ニーズとシーズの違い

マーケティングの用語に、「ニーズ」と「シーズ」という似た用語があります。

ニーズは、Need(必要)の複数形で必要とされているものです。シーズは、Seed(種)の複数形です。

ニーズとシーズの意味は、新商品開発や販売をする人にとって、ぜひとも知っておきたい用語です。

それぞれの意味と違い、新商品開発での考え方、マーケティング分析についてまとめました。

ニーズとは?

ニーズとは、今現在必要とされているもののことです。市場では必要とされているものなので、そこに商品を供給すると、売れやすいです。顧客ニーズが把握できたら、企業は儲かります。

ニーズが発生するためには、需要と供給のバランスがあります。需要があるところにニーズがありますし、供給が少ないところにもニーズがあります。ニーズがたくさんあり、供給が少ないところでは、事業が成功しやすいです。

例えば、街中でお腹が減って、食事をしたくなったら飲食店を探すと思います。「ラーメンが食べたい」と思ったら、その人のニーズがラーメンです。

ニーズから商品を開発することを、「マーケットプル型」と言います。

中小企業では、ニッチ産業を攻めることが定石ですが、ある程度のニーズがなければ事業としては成り立ちません。新商品を開発する場合、会社の性質や市場規模、商品の価格、提供方法などで、どのようなニーズに対応した商品やサービスを供給するのかを検討します。

シーズとは?

シーズとは、種のことです。将来的にニーズになるかもしれませんが、まだ売れるものと知られたものではなく、種として眠っている価値のことです。

眠っている価値に商品を投入し、売れるようになったら、先行者利益が得られます。ある意味で、次のニーズの発見がシーズでもあります。

種が芽吹いて果実となるためには、肥沃な大地に種をまき、育てていく必要があります。種の選び方に先見力が求められ、肥沃な大地と育て方に経営力が求められます。

シーズに投資をして将来に利益を出していける企業は、社長に理想実現に向けての情熱があり、またかなり凄腕の財務のプロが在籍している、もしくはそのコンサルタントが側近で支援していることが条件だと思います。

シーズには、新価値創造という意味合いがありますが、主にマーケティング寄りのシーズと、技術寄りのシーズの2種類があります。

マーケティング寄りのシーズ(マーケティングプッシュ型)

マーケティング寄りのシーズの例は、例えば服の流行です。「去年は青が流行ったので、今年は赤を流行らそう」という具合です。

人が新しく価値と感じるものを生み出すことができたら、確実に売れます。そして、いろいろな企業が「参入障壁が低く儲かるぞ」と気が付いた場合、たくさんの企業がグワッと参入してきて、市場がボロボロになることがよくあります。

私はマーケティング寄りのシーズのことを、「マーケティングプッシュ型」と呼んでいます。

技術寄りのシーズ(テクノロジープッシュ型)

研究所で開発されている新技術は、シーズであることがほとんどです。

技術寄りのシーズは、例えばリニア鉄道がそうでしょう。リニア鉄道が無い状態で、人々に「リニア鉄道は必要ですか?」と聞いても、答えにくいことでしょう。おそらくですが、リニア鉄道が開通したら、利用者の多くは「なんて便利なものなのだ」と感じることでしょう。

技術寄りのシーズは、新商品を開発しても、その商品やサービスを事業化することは、また別の技術が必要となる場合があります。

リニア鉄道の場合ですと、超電導磁石の技術があっても、それを電車に搭載して、超電導コイルを冷却し続ける技術がいりますし、非接触で電車に電力を供給する技術も必要です。安価にガイドレールを敷く技術も必要でしょう。

技術寄りのシーズのことを、「テクノロジープッシュ型」といいます。

マーケティングプッシュ型であれテクノロジープッシュ型であれ、シーズから生まれた新商品・新サービスは、今現在ニーズは存在しないので、売れるかどうか売ってみなければ判りません。

町づくりをするシミュレーションゲーム「シムシティ」のように、「自分が遊びたいから」という理由でシーズから生まれた商品が、世界的にヒットした例もあります。シムシティは、潜在ニーズがあったものと思われます。

ニーズとシーズの違い

上記のご説明から、ニーズとシーズの違いを読み取っていただけたことでしょう。まとめると、次のようになります。

ニーズはすでに必要とされている価値。シーズはこれから求められるようになる新価値。

ニーズは、顕在化している価値です。シーズは、潜在的な価値です。ニーズには本質的なニーズと、もともとシーズであったものが顕在化してニーズになったものがあります。

基本的なニーズの代表例は、衣食住です。基本的なニーズの中にも、分類していったら顕在化していないニーズもあります。

例えば、日本にはもともとインド料理のお店はなく、当然インド料理のニーズはありませんでした。昭和初期に中村屋のインドカリーが生まれ、大戦後の銀座に本格インド料理のお店ができ、インド料理の魅力が日本人に受け入れられました。それまでの日本では、「インド料理を食べたいですか?」と誰かに質問しても、「そのような得体のしれないものは食べたいとも思わない」と答えていたはずです。つまり、インド料理はシーズでした。

現在では、インド料理は当たり前のように浸透しているので、どこにランチを食べに行くか検討していたら、「インドカレーが食べたい」という人が増えてきました。つまり、インド料理はニーズになりました。

このように、もともとシーズだったものがニーズに変化していきます。

ニーズとシーズの新商品開発

ニーズとシーズそれぞれの価値に基づいて新商品を開発した場合の違いをご説明いたします。

ニーズの新商品開発

ニーズからの新商品開発は、ニーズを発見することから始めます。ニーズを発見するためには、先見力が必要です。新聞や雑誌を読み、本をよく読み、世の中を良く見て回り、市場の変化を感じ取ることです。マーケティング分析手法としては、マーケティングの3C分析が効果的です。

ニーズのある商品は、新規開発したらすぐに売れることでしょう。新商品開発の方向性も明確になりやすいです。ただし、売れることが知られているものについては、競合他社が現れやすいです。

ニーズに対して、さらに付加価値を加えて、自社の強みにすることができたら、差別化ができて売れやすいです。その付加価値が求められていないものであれば、マーケティングプッシュ型に近くなります。

市場が飽和していたら、創意工夫によってニッチ産業や隙間産業で大企業が手を出さない部分で、新しいニーズを創り出していかなければなりません。

シーズの新商品開発

シーズの場合、マーケティングプッシュ型とテクノロジープッシュ型で新商品開発の流れが異なります。

マーケティングプッシュ型は、もちろん世の中にない価値で、市場から求められそうな価値を考えるところから商品開発を行います。テクノロジープッシュ型は、新技術から商品開発を行います。

共通することは、新しい価値の値打ちを知ってもらうためのPRが必要であることです。シーズは、認知されていない商品ですので、シーズから生まれた新商品は、ニーズから生まれた新商品と異なり、PRに費用がかかったり、売れるようになるまでに時間がかかったりします。

開発できたとしても、その商品やサービスを事業化することは、また別の技術が必要となる場合があります。そのようなことから、テクノロジープッシュ型の新商品は、商品化に時間がかかります。別の技術が必要であったり時間がかかったりすることによって、それが参入障壁となり、競合他社が出てきにくくなります。

しかし、すべてのシーズがニーズに変化していくわけではありません。そこが、シーズからスタートした新商品開発の難しいところです。

新商品開発はニーズですべきか?シーズですべきか?

新商品開発をニーズですべきか、それともシーズですべきか、迷われることでしょう。どちらかと言われたら、状況に異なりますが、おおよそで述べるのであれば、次のようにアドバイスすることが多いです。

  • 中小企業 = シーズ寄りのニーズ
  • 大企業 = どちらでも良い

商品と製品の違い

商品とは、商売のための品物、つまり販売を念頭にしたものです。製品とは、製造された品物、つまり売ることを前提として作られていない場合があるものです。

それを踏まえて新商品を開発するということは、売ることを念頭に置いたものですので、原材料の調達、販売ルートの確保やPR方法、提供方法など、バリューチェーンで検討することです。最近では、顧客の感動を提供するために、カスタマージャーニーで検討する場合もあります。

中小企業が新商品開発をする場合

中小企業が新商品開発する場合は、いつ売れるかどうかわからないものを開発するよりも、今現在ニーズになっているものを開発した方が良いです。中小企業は、大企業と比べて資金的余裕が少ないからです。

既存事業に近い多品種化や多角化をする

先ほどもご説明したように、多品種化や多角化で既存事業と近いところを攻めた方が良いです。

多品種化であれば、例えば、空調配管用のストレーナーを製造しているメーカーであれば、冷水と温水を配管内でミキシングできる器具を開発するといった具合です。家庭用の水道フレキ管を製造しているメーカーであれば、給湯器用の保温性の高いフレキ管を開発することが、自社の既存事業に近い多品種化に該当します。

多角化であれば、例えば、空調配管用のストレーナーを製造しているメーカーが、オイルプラント用のストレーナーを開発することが考えられます。家庭用の水道フレキ管を製造しているメーカーであれば、消防設備用のフレキ管を開発することで、自社の既存事業に近い多角化に該当します。

ニッチを狙う

また、ニーズの中でもシーズ寄りのものを開発することを述べましたが、その理由は、大企業が手を出しにくい、ニッチ市場を狙って差別化し、自社がナンバー1になる必要があるからです。ナンバー1になると、市場原理によって、自社に利益が出やすくなります。

大きなマーケットがある基本的なニーズには、大企業がすでに独占状態だと思います。大企業が手を出さない隙間を中小企業が狙っていくことが、中小企業での商品開発の常套手段です。

シーズ寄りのものでも、市場が大きくなってくると大手企業が出てきます。大企業が参入してきて、低価格で販売されるようになり、一気に市場を取られてしまい、ナンバー1でなくなってしまいます。

例えば、タピオカは小さなお店から始まり、認知度が高まっていくにつれて、コンビニでも売られるようになりました。このような状態でも自社の売上減を防ぐために、波状攻撃を検討しておくことが大事です。

どちらにしても、商品開発のノウハウがない中小企業が新商品開発をする場合は、多品種化か多角化のどちらかで、既存事業に近いところを狙うことが大事です。そして、いきなり大風呂敷で行うのではなく、必ず小さな領域でテストマーケティングを行うことが大事です。

新商品開発で覚えておくと便利なマーケティング分析の知識

売れる新商品を開発するためには、マーケティング分析が大事です。私が商品開発コンサルティングのときによく利用する、組み合わせて使用すると効果的なマーケティング分析の知識をご紹介いたします。

いくつか組み合わせると売れる新商品開発がしやすいマーケティング手法の代表選手は、次のものです。

  • マーケティングの3C分析
  • 顧客マップとカスタマージャーニー
  • バリューチェーン
  • 4P分析

マーケティングの3C分析は、ニーズとシーズの両方の価値分析に適しています。他のものは、新商品開発で不随するものです。カスタマージャーニーは、顧客の感情を分析するのに役立ちます。顧客マップは、どのようにして顧客が新商品や新サービスと契約に至るのかのルートを示したものです。バリューチェーンは、原材料の調達から商品の提供までの流れを分析するのに役立ちます。4Pは、商品に伴う4つのPについて分析します。

これらのマーケティング分析のフレームワークを組み合わせて使用することが大事です。

これらの他にも、ピーター・F・ドラッカー先生が提唱された「経営者に贈る5つの質問」や「イノベーション7つの機会」を併用すると効果的です。

以上、ニーズとシーズの違いをご説明いたしました。ニーズとシーズの考え方は、売れる商品を開発するために必要な考え方です。

ニーズやシーズの他にも、ウォンツというものがあります。ウォンツは、またの機会にご説明したいと思います。

当社では、マーケティング分析から新商品開発、販売までをワンストップでご支援するコンサルティングを提供しています。中小企業で、「マーケティングに基づいて新商品開発をして、ノウハウを蓄積していきたい」「販売までしっかりサポートしてもらいた」といった、新商品開発のご支援を求めている企業様は、ぜひご相談ください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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